報告者 申偉秀医師
症例1 54歳女性
主訴: 51歳:ジョギング中に両側大腿部前面の痛みがあり、近医整形外科で診察、レントゲンなどで問題なし。痛み止めでは安静時痛はないものの、走ると同部位が痛む。
その後もジョギングをすると両側大腿部の痛みが出る。
既往歴:43歳乳癌 ゾメタを43歳から53歳まで使用
両側AyI-AyIIで受診時は痛みなし。
治療:To/d+c 2.5’ T3-6 2.5’ 両AxIII//6/3!
経過:施術当日のジョギングでは両側大腿部前面の運動痛が若干あったが、翌日のジョギングでは運動痛が軽減した。その後の走りでも以前より良かったため継続治療希望。
その後大腿部前面から側面の痛みが気になるとのことで
To/2d+c+d 2.5’ L2-S1 7’ 6/3を4回継続、施術するたびに運動時の痛みがなくなり
もう少しと本人が感じている。
課題:大腿部のAyI-IIの運動痛では胸椎と腰椎どちらを中心にするべきか?
症例2 13歳女性
主訴:
12歳:体育のバスケットの授業で左足首の靱帯を切ってギブス固定とリハビリ施行。2ヶ月後から運動を再開したところ、左膝の上や腰痛が続いた。
13歳:運動時の左股関節痛が出現した。ジョギング程度では大丈夫であるが全力走では左股関節痛が出る。鍼灸などに通ったが改善なしで遠絡療法希望。
治療: 左股関節の局所治療として
lAxI/a→lTxIII/0:a
lAxII/a→rTxI/0:aにて左股関節の重さが取れた
(全速力で走って見れないため、左股関節を外旋、内旋することで若干の症状を出すことができる、この状態で軽くなっているとのこと)。
To/L2-S1 3’を追加、自宅でもリモコンで臍部上下を30秒ずつ押圧してもらう。
経過:翌週受診時に全速力時の左股関節痛がかなり軽減されたとのこと。
その後To d+c 2.5’ L2-S1 3’ 6/3後にlAxI/a→lTxIII/0:a lAxII/a→rTxI/0:aの局所治療を追加することで、段階的に股関節旋回時の痛み、重さが軽減する。
同治療を3回(都合5回)週1のペースで行い終診。その間短距離の練習を止めてもらっていた。
課題:左足首外傷からのCRPSの要素も加わった左股関節痛への治療として、督脈治療に局所治療は妥当か?他にどのようなことを考慮すべきか?
当日のディスカッションの内容です。
(レコーダーから書き起こしました。
もし誤りがあればコメントで訂正頂けますようお願いいたします。寺木啓祐)
■申Dr.
SCと四肢の対応ラインの解明がまだ完全ではないということで、下肢のラインとSCの関係がわかりやすかった症例を用意してみました。ランナーで走った時だけ痛みが出るという2例です。
まず一例目はランニングをした時だけ大腿部のAyI、AyIIに痛みが出る症例で、胸椎と腰椎が関係すると考えます。治療は時間の関係で、初回は胸椎レベルのみの治療(AyIの痛みは1回で改善してしまった)を行い、2回目以降は腰椎レベルのみ4回でよくなりました。初回から両方を加えたほうが改善は早かったのでしょうか?
■小泉Dr.
柯先生の講義で、マラソンランナーはどうしたら長時間足を上げて走れるか、というのがありました。それはAyIを治療すれば長く足が上がるということでした。AyIIについてはL4/5の対応です。L4/5は大腿部のAyIIと下腿部のAyII、AyIIIに関係しています。この症例はAyIとAyIIに症状があるので、それぞれ胸椎と腰椎レベルの治療を行えばよいと思います。
■申Dr.
両方に症状が出ている場合は、胸椎と腰椎がそれぞれ同時にダメージを受けていると考えればよいでしょうか?また、AyIの症状は胸椎の治療1回で消えてしまいましたが、症状が消えればその後は胸椎の治療は入れなくてもよいでしょうか?
■渡辺Dr.
経過で治療当日のジョギングでは両側の大腿部前面の運動痛が若干あり、その翌日は痛みが側面に移動したということですが、もともと側面にも痛みはあったが、前面のほうの強い痛みが緩和したので、側面に移動したように感じたのだと思います。
既往に乳がんがあります。よってT4~8レベルに側弯(傍脊柱のリンパの圧迫)があり、これは簡単には治らないと考えられますので、胸椎レベルの治療は継続すべきです。
■山本Dr.
乳がんの患者は必ず胸椎の側弯があるのですか?
■渡辺Dr.
遠絡の理論では、傍脊柱のリンパの流れが遮断されることによって癌が発生するとしています。リンパの流れを圧迫する原因に側弯があると考えています。背部診で傍脊柱に4椎体以上の範囲で陥凹があれば、そのレベルの臓器に癌が発生する可能性が高いといえます。
せっかく既往を確認しているので、背部診で胸椎、腰椎レベルの腫れと陥凹、それぞれの左右と範囲を確認したほうがよいですね。自覚症状は出ていませんが、おそらくL4/5レベルにも所見があるのではないかと思います。
■申Dr.
私は線維筋痛症を診ていますが、股関節の痛みだけは局所の治療がとてもよく効くように感じています。二例目は足関節捻挫が元となり股関節の痛みが出ていましたが、元の外傷は治ってしまった後も股関節の痛みが残っていました。それも運動をした時だけ決まった部位に痛みが出るという局所の症状のような出かたで、局所の治療が著効するのですが、この場合の治療は中枢から行うべきか、局所だけでも良いのか、いかがでしょうか?
■渡辺Dr.
CRPSと言っていましたが、触れない痛みはあったのでしょうか?
■申Dr.
足関節にはありましたがすでに治ってしまっています。膝と腰の痛みも今はありません。走った時だけ股関節に痛みが出るのですが、局所治療を行うと著効します。ほかの部位の痛みもあるので、治療にはTO/L4,5も入れていますが、股関節痛に関しては局所治療が最もよく効いている印象です。
股関節にはAyI,AxI,AxIII,AxIIIのラインがありますが、SCの対応はすべてL4/5レベルでよいでしょうか?また、局所治療が効いてしまう場合もSCの治療は行ったほうがよいのでしょうか?
■中村Mr.
股関節はL4/5が中心ですが、L2~S1になっていたと思います。
AxIIIの症状はなかなかとれません。というのはAxIIIは a だけでなく c+a が必要だからです。
■申Dr.
セミナーでも使用するためにSCとラインの対応表をはやく完成させたいと考えています。
AxIII、AyIIIの下肢のラインはどのレベルが対応するのでしょうか?
線維筋痛症の患者さんには上から下まで入れていますが、胸椎レベルで改善した例と鳩尾あたりでうまくいった例もあります。
■渡辺Dr.
膝全体(全周性)に痛みがあれば下位脳、特に全周性の場合はAtlasより少し上の部分なのではないかと思います。SCというよりは下位脳に炎症が及んでいるので、回復には時間がかかります。また身体の上から下までAyIII、AxIIIはAtlasです。
■堀口Dr.
大腿部の後側の痛みについて、SCのどのレベルか柯先生に質問をした時には、「ない」と言われました。その後、背中を診て異常があるレベルを治療するように言われました。