報告者 山本和男医師
患 者 59歳 男性
既往歴 左大腿外側皮神経痛(神経障害性疼痛)、右胸郭出口症候群
主 訴 左肩の外旋障害
経 過
3週間前に車の右運転席に座り停車したのち、センターボックス上にあったミニバッグが後部座席側に落ちた為、これを左腕で拾い胸の正面に引き上げた。直後から左肩上部の激痛が出現。以後左腕の外旋ができなくなった。具体的には羽ばたき運動をしようと肘を直角に曲げ、両上腕を水平にして体の側方へ開いたとたんに激痛が走り、以後しばらくは気分が悪くなり動けなくなる。前方挙上はできる。うでを伸ばしての側方挙上は70度程度までが限度。寝返り時の痛みで目が覚め睡眠不足となっていた。
疼痛ラインの選定と治療経過
左のTxⅠ、TyⅠ、TyⅡ、TxⅡ、TyⅢ、TxⅢについて連接と相補は無効。
中枢も考慮して左の万能式。両側AXⅢの相補。To / c + a , Th4-5, L3-5などすべて無効。
結局局所に的を絞り、Fポイントのa点について連接を検討。陰径ではCポイントの有無にかかわらず両側すべて無効のため、陽径について一ラインずつ検討した。
(一本鍼の気分?)
その結果 右のAyⅡ/0 : a のみが有効であった(押し棒、LEDともに有効)。
以後はそこを使用して痛みを抑えつつ、肩のリハビリができるようになった。
考 察
十二径絡の連接の図(次ページ)から見ると、AyⅡにつながる上肢はTyⅡとTxⅢのみであり、CポイントなしでつながるのはTyⅡのみである。
よって病巣は左TyⅡ/aであると考えた。
左TyⅡの同名AyⅡは同側対側の法則では治療ラインは左側のはずである。
しかし例外の反対側が唯一の有効点であった。左が効かない理由は不明である。
結 語
同側対側の法則に従って結果が出なくとも、ときには例外もあると思って探索することが
重要であると考えられた。
当日のディスカッションの内容です。
(レコーダーから書き起こしました。
もし誤りがあればコメントで訂正頂けますようお願いいたします。寺木啓祐)
■山本Dr.
同側と対側の法則に関しては、間違って反対側に手技をしてしまっても効果があったという経験談を聞くことが度々あるのですが、実際に報告として出されているものはないようなので、今回は敢えてレポートにしてみました。今後ももしそのような例があればレポートとして残していけたらよいのではないかと思います。
■渡辺Dr.
連接について、どのラインが効いてどのラインが効かないかということは、セミナーのDコースで習ったライン間の関係でみていくと分析できるかもしれません。例えば、ここでは既往が2つ、左大腿外側皮神経痛と右胸郭出口症候群がありますが、大腿外側皮神経の主な神経絞扼部位はAyII、胸郭出口症候群はタイプがいくつかありますがTxIIと考えてみると、左肩の外旋障害(TyII)に対してrAxIIIが効かないのは右胸郭出口症候群があるから・・・等々、説明できるかもしれません。
■小泉Dr.
多くはありませんが確かに治療を行った側とは反対側が改善したという患者さんの反応がでることはありますね。
■中村Mr.
SCの治療を行った後の増流処置/牽引瀉法(//6/3!)の際に、反対側に効くことを経験することが度々あります。特にAxII//6/3!の時に多いように感じます。
■渡辺Dr.
SCからAxIIIへの炎症の波及は、同側・対側いずれの可能性もあり、その後の進行のパターンもいくつかあります。個々にAxIIIの圧痛などを見てみないと一概に判断はできません。
■中村Mr.
私は全例にAxIIIの圧痛を確認しています。L4/5レベルあたりの腹部(臍の両脇)を押してみて圧痛があるかを確認します。
■申Dr.
スタンダードな治療手順は SC → 両側AxIII//6/3! → 患側AxII//6/3! ですよね。
■中村Mr.
私は両側AxIII//6/3!を行い、次に患側AxII//6/3!、1ラインの処置ごとに変化を確認して症状が残っていれば最終的に対側のAxII//6/3!まで行うことが多いです。